茶番

「アァッ

彼女の大切にしていた髄が、ぬろりと引き抜かれていく。石英を彷彿とさせる瞳が、大理石の如く濁っていく。口からは白い泡を噴き、床にジャワティーを飛散させる。凄惨極まりないこの状況でも、彼女は笑みを絶やしていないように見える。

「さすが我らが天使、美しい」

声の主達は、髄のあったその場所を、恍惚とした表情で見ている。その目には、七色に光る液体が映し出されていた。これは、髄を守るためのものだったに違いない。しかし、今となってはその役割を果すことも叶わない。

「主よ、この奇跡に感謝します」

彼がその言葉を発する頃、髄はもはやストローと化していた。仰々しいオルガンの音と共に、液体を飲み干す。なにかが起こる気配は無い。

「主は試練を与えてくださった。彼女は天使ではなかったのだ」

髄を握り締め、訴えかける。その瞳は、オイルが飛散した大理石のように、七色にくすんでいた。